元探偵が語る個人情報調査の手口と守り方『日常編』。個人情報が漏れてしまうのはネットワークからだけではありません。今回は、尾行やゴミの持ち去りでバレてしまう“日常生活の個人情報収集”を手口&防御法セットでご紹介します。
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「全国電話帳」に注意 スマホアプリで76万人分の個人情報流出か
産経新聞 10月6日(土)17時40分配信
前に「元探偵が明かす、個人調査の実態と個人情報漏れの予防法」記事 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/9303 ] で、SNSなどでちょっと漏らしたプロフィールから“データ調査”という手法を使い、過去の結婚歴や職歴、戸籍データまであらゆる個人情報を引っ張り出してくる手口を解説しました。
そこから一か月も経たないうちに冒頭の事件が起きたり、全国の世帯の住所氏名をネット上で公開するサイト「住所でポン」が話題になりました。すこし毛色は違いますが、他人のパソコンをリモート操作して犯罪予告を書きこむウイルスで誤認逮捕があったりもしましたね。おちおち安心してスマホもパソコンも使っていられない時代になってきた気がします。
しかし怖いのは、なにもネットワークからの個人情報漏れだけではありません。前回に続いて今回はもっとアナログで直接的な危険があるもの‥‥尾行やゴミ持ち去りでバレてしまう“日常生活の個人情報収集”を手口&防御法セットで紹介したいと思います。
■個人情報が狙われる4つのパターン
【1】ストーカー、人間関係トラブル
【2】プロによる素行、浮気調査
【3】誤認、巻き添え
【4】被害妄想、自意識過剰
本題に入る前に、どんな理由で某国のVIPでもないあなたの個人情報が狙われるか。その代表的なパターンを挙げてみました。実行者が一般人かプロかによって【1】【2】で分かれます。ストーカーは単独犯が多く手口も稚拙だったりしますが、放置すると傷害事件になったりするので厄介です。プロによる調査は「依頼者がお金を払っている間だけ有効」という制限はありますがノウハウ、人材、機材すべてが強力です。
意外に見逃しがちなのが【3】の誤認、巻き添え被害。たとえばあなたが異性の同僚と飲みに行って仕事のグチを聞いただけでも、相手の恋人や配偶者が「こいつは浮気相手に違いない!」と思い込むパターンです。筆者は探偵時代に何百件と浮気調査を見てきましたが、徹底的に調べたあげく結局シロ(濡れ衣)だったというケースがたくさんあります。また、集合住宅に住んでいた場合、隣の部屋の住人が調べられる中で、あなたの生活パターンや住所氏名が副次的にバレてしまうケースもあります。
【4】は実際に狙われていないのに「街の住人みんなが24時間自分を監視している」「自分の頭の中に宇宙人が盗聴器を仕掛けた」という完全な妄想のパターン。これは探偵の守備範囲ではないので省いて、次ページから主に【1】【2】の手口と防御法を解説していきます。
■周囲と協力して撃退せよ!――張り込みの手口と対処
【張り込みとは】
自宅や職場近くでターゲットを見張り、その行動パターンや弱みを調べる手法です。素人はただ単に見張るだけですが、プロの探偵が張り込む場合はたいてい「証拠撮影」か「尾行」がセットになります。
【主な手口、見分け方】
・自宅や職場の“人の出入り”が見える場所に、定期的に怪しい人間やクルマがいる
・同じ人間かどうかよりも、同じ場所かどうかが大事なポイント(プロは人員を入れ替える余裕がある)
・集合住宅に住んでいる場合、見慣れない人間が敷地内に出入りしている
・不審なクルマが停まっていた場合、あまり見かけない他府県ナンバーである
・同じ地域のナンバーでも、プレートのひらがながレンタカーを意味する「わ」である
・夏や冬で人間が乗っていてるのに、エンジン停止してエアコンもかけていない(余計な音をたてないため)
・クルマの後部座席などに目張りがしてある(中から撮影しているのを隠すため)
・玄関ドアの隙間をよく見ると、丸めたチリ紙が挟んである(ドアの開閉を知るため)
・郵便受けの中身を荒らされた形跡があったり、届くはずの郵便物が消えたりする
【防御、対策法】
一般人ストーカーの場合は単に興味本位や自己満足(好きな人の傍にいるという安心感)が目的で、そこに郵便物や私物の盗難が絡んだりします。プロの場合はもっと細かく生活パターンの把握、証拠撮影が主な目的になります。ターゲットが一人暮らしですと「部屋の明かりが点く時刻」「電力メーターの回転する速度」「ドアの隙間に挟んでおいた紙片が落ちたかどうか」で、だいたいの生活リズムが分かったりします。
張り込みは自分がターゲットにされても比較的気づきにくいため、ともかく「おかしいな?」と感じたら疑ってみることが大切。ただし立っている人間や停まっているクルマの運転者をいきなり問い詰めるのはNG。相手が無実だとトラブルの元になる、ストーカーだと逆に喜ばせてしまうかもしれない、プロだと警戒されて分かりにくい調査法に切り替えられてしまう‥‥などあまり良い結果を生みません。
筆者が経験的に、張り込み時にやられて一番嫌だったのは「近隣一帯がすべて敵になる」ことです。小さい子供がいる家庭の奥さんだとか、マンションだったら住み込み管理人さんに「あそこに不審者がいてジロジロまわりを見ています」と報せてまわるわけです。張り込み者がストーカーだろうがプロ探偵だろうがしょせんは人間。どんなにうまい言い訳を用意していても、ひっきりなしに近所の主婦たちから「ここで何してんの?」と問い詰められるプレッシャーは想像を絶します。証言者が多いほうが警察も重い腰を上げやすいですし、この対策法が筆者的にオススメです(※効果を保証するものではありません)。
このほか、小型監視カメラを設置してさらにプレッシャーを与えたり、部屋の照明を留守中でも一定時間ごとにオンオフ切り替えてくれるタイプに換え、不在をバレにくくする方法もあります。可能であればいつも路上に停まっている不審車両のナンバーを記録しておくなど、客観的な証拠収集も忘れないでください。
■漫画のような尾行者はいない――尾行の手口と対処
【尾行とは】
ターゲットを徒歩やクルマで追跡し、その行動ルート、移動先を調べる手法です。まず張り込みでターゲットの出現を待ってから尾行に移行するパターンが多いです。
【主な手口、見分け方】
・自宅や職場を出るとき、一定の場所に人やクルマが待ち構えている
・自宅や職場を出た後、一定の距離で人やクルマがついてくる
・マイカーの後部底面(排気口やマフラーの近くが多い)に見慣れない機械が貼り付けてある
・その他、追尾してくるクルマが不審かどうかの判断基準は前項「張り込み」に準じる
【防御、対策法】
尾行も張り込みと同様、いかにして違和感に気付くかが最初のポイントです。本物のプロは漫画やドラマにあるような「黒サングラスをかけて電柱の陰から陰へ移動」なんてマヌケな尾行をしないので先入観にまどわされないでください。普通に携帯なんかをいじってるフリしながら、あなたのことなど眼中にないかのように追いかけてきます。人通りの少ない道ではやや離れて、見失いやすい人混みの中では距離を縮めてきます。尾行中は相手の足下を見ているため、いきなりあなたが振り向いても目があったりしません。ベテラン探偵であれば、よほど注意しないと気付くのは難しいでしょう。
逆に経験の少ない探偵やストーカー、あなたの奥さんが「ちょっとダンナを尾行してきてよ」と頼んだ友達などであれば、ボロを出しやすいので気付くのはわりと容易です。
尾行者が誰であっても「左折法」が見分け方として有効です。これは徒歩でもクルマでも、左(右でも構わない)に3回連続で曲がる‥‥というもの。同じ方向に3回曲がったらスタート地点に戻りますよね。こんな意味のない移動をして、それでもあなたを追ってくる人間がいれば、それは尾行者だと断定できます。同じ考え方で、移動スピードをランダムに変えてみて相手が追ってくるかどうかを見るのも有効。要は不自然な動きをすることで尾行者をあぶり出すわけです。
尾行者がその場でわかったとして、問い詰めるかどうかはケースバイケース。追いかけてきたのが恋人や奥さん、その友達といった知り合いならば「俺は浮気なんてしてないから」と話しあって誤解を解くのも良いでしょう。逆にまったく面識のない相手の場合、ちょっと判断に困ります。
まず相手がクルマならばナンバーをメモしておくこと。警察へ被害を届ける時に必要ですし、あとで陸運局に行ってナンバーから所有者を照会する役にも立ちます。
相手が徒歩でもクルマでも、不審な尾行者がいたら撒くのを優先したほうが良いかもしれませんね。急に振り返って逆方向に歩いたり、電車のドアが閉まる瞬間に下りるなど、予想されにくい手段で尾行を打ち切らせます。諦めきれない相手はまた別の日に尾行を試みようとしますから、その待ち伏せ中に前項「張り込み」と同じ対応で追い払いましょう。
ところで【手口、見分け方】のリストで“見慣れない機械”とは何だ?と思われたでしょうが、いわゆる発信器のことです。ケース内部にGPS発信器が仕込んであり、タイプにもよりますがタバコの箱程度の大きさと思ってください。それが強力なマグネットやガムテープなどでクルマの底面に仕掛けられ、バッテリーがある限り精度の高い位置情報を尾行者に教え続けます。昔は失尾(ターゲットを見失うこと)すると当てずっぽうで探しまわるしかありませんでしたが、この発信器の普及によって尾行や行動監視がとても簡単になりました。逆に、尾行される側にとっては脅威です。
あらかじめ自分のクルマをチェックして発見できればラッキーで、そのまま勝手に処分して相手に「行動監視がバレてるな‥‥」とプレッシャーを与えるもよし、バッテリー交換のため車庫へ忍び込んでくるところを「不法侵入の現行犯」として適切な対処するのも良いでしょう。発信器まで駆使するのは、ほぼプロの探偵に限られますから、彼らの得意な乱戦よりも“法律を盾にまっとうな対応”をするのが得策です。
■個人情報の宝庫――ゴミを収集&解析する「ガーボロジー」
【ガーボロジーとは】
個人や企業の出したゴミを持ち帰って解析することで普通では得られないような情報を調べる方法です。専門用語ではガーボロジー(Garbology)と呼ばれ、本来は学術的な研究にも活かされています。
【主な手口、見分け方】
・ゴミ捨て場付近に不審な人物、クルマを見かける
・実際にゴミ袋を、クルマやバイクに積み込んで走り去るのを目撃した
【防御、対策法】
探偵の調査で出番こそ少ないものの、なかなか強力な手法がこのガーボロジーです。普段どれだけSNSなどで個人情報を漏らさないよう注意している人でも、意外に生活ゴミまでは気が回らないもの。買物のレシートからネット通販の伝票、食べているインスタント食品や化粧品の銘柄、持ち帰ってきた仕事の書類などなど‥‥ゴミの中にはあらゆるお宝情報が眠っています。また、気持ち悪いハナシで恐縮ですが、一部の変態的ストーカーにとっては「異性特有のゴミ」なんかが非常に価値あるものらしいです。
張り込みや尾行と違って、自分から積極的にチェックしないとガーボロジー被害には気づけないのが難点。ストーカー被害に遭っていると自覚した時は、念のためゴミ収集日の早朝に不審者がいないかどうか何回かチェックしてみても良いでしょう。特にカギや扉が付いていない、野ざらしのゴミ捨て場を利用している人は要注意です。
対策としては、文字や数字情報の書かれているゴミは徹底的にシュレッダーで粉砕してしまうこと。復元も絶対不可能ではありませんが、ずいぶん安心感が増します。それでも出てしまう生活ゴミは、ちょっと面倒ですが収集車が来たときに直接渡しましょう。ゴミ捨て場にある時間がゼロならば、どんなストーカーでも手出しはできませんから。
ちなみにゴミを持ち帰る行為そのものは、民法に照らせば「ゴミに出した時点で所有権を失う」ため窃盗罪に該当しない、つまり違法でない‥‥筆者をはじめ探偵たちはそう教えられています。しかしゴミ捨て場がマンションの敷地内だったら不法侵入となり、また自治体ごとにゴミの持ち去りを禁止する条例があったりしますから、法的には非常にブラックに近いグレーだと思います。ゴミ捨て場に怪しい人間がいたら、まず役所や町内会、マンション管理人などと相談して、状況に合った対処をしてください。この場合も張り込みや尾行と同様、不審車両のナンバーを控えておくと役立ちます。
■意外な盲点――コードレスの会話は漏れ放題
【コードレス傍受とは】
暗号化されていないアナログ式のコードレス子機で通話している場合、その漏れ電波をキャッチして会話内容を聞いたり録音する行為です。盗聴と似ていますが、自分から積極的に機械を仕掛けるわけではないので正しくは「傍受」と呼びます。傍受そのものに違法性はなく、取り締まることはできません。
【主な手口、見分け方】
・自宅でやや古いタイプのコードレス電話を使っている
・子機を使ってプライベートな会話をすることがある
・半径数十メートル以内に、(イヤホンなどを付けた)不審者や不審車両を見かける
【防御、対策法】
近年は携帯電話が主流になりましたが、ご年配の両親と実家で同居している人などは、まだ自宅の電話機を多用していることも少なくないでしょう。しかし意外に知られていませんが、ひと昔前のコードレス電話は親機←→子機のやりとりをアナログ電波で行っていますから、市販の広帯域受信機(誰でも免許不要で買えます)を使って簡単に傍受できてしまいます。傍受した会話内容をネットで不特定多数にバラまいたり、会話内容をもとに脅迫行為でもされない限り、これを罪に問うことはできません。
心配な場合の対策は簡単で、まず使用中のコードレス電話の型番をメモしてメーカーに「傍受を防ぐデジタル暗号化がされているかどうか」を聞きます。対策済みだと答えられればOK、もし未対策の機種を使っている場合、最新機種はたいていデジタル暗号化済みですから買い換えれば済みます。
■究極の対策法!?――プロを味方に雇う
日常生活における個人情報の漏れ方と対処法を紹介してきましたが、「そんなに全部ひとりでやれないよ」とか「プロの尾行や張り込みに気づける自信がない」という人もいるでしょう。そんな時は発想を逆転して、究極の対策法――プロの探偵を自分で雇うこともできます。お金はかかりますが、実際ストーカー被害に悩んでいる人にとってはこれが一番手っ取り早いともいえます。なにせ警察はこれだけストーカー被害が広く認知された現在でも、あまり積極的に動いてくれませんので‥‥。
探偵は、発信器だとか盗聴器だとか物騒な単語が日常的に飛び交う現場で活躍する、いわば職業ストーカー。相手がアマチュアだろうがプロだろうが手口の大半を知り尽くしています。もともと探偵社の多くは「ストーカー対策」というカテゴリで依頼を受け付けていますので、浮気調査を依頼するよりも心理的なハードルは低いと思います。
たとえば仕事の帰りに張り込まれ、帰宅までの行動を尾行されているような疑念があったら、ありのまま探偵に話してください。依頼を受けた彼らはあなたの職場周辺を入念にチェックして、張り込みや撮影に適した場所の候補をピックアップし、そこに潜む不審者をこっそり調べ上げることができます。敵の正体がわかれば警察に届けるなり、弁護士を通じて内容証明でプレッシャーを与えるなど様々な対策がとれます。
ただし世の中には未熟な探偵社や悪質な探偵社も少なくないので、依頼時には信用できるところかどうか見極めることが大切です。いくつか簡単なチェックポイントを挙げておきますね。
【信用できる探偵社の判断ポイント】
・契約を急がせず、他社と比較してからゆっくり決めてください‥‥と余裕がある
・予算に応じた複数プランを提案してくれる
・ちゃんと調査したという証拠(報告書と写真、ビデオ)を出してくれる
・どんな質問にでも嫌がらず答えてくれる
信頼できない探偵社はその逆パターンです。
・今すぐ契約しないと大変ですよ!と相談者の不安を煽る
・やたら高い料金ばかり提示してくる
・契約書や報告書など「証拠として残る書面」を出したがらない
・プロに任せておけ!の一辺倒で質問に答えてくれない
これらのポイントをきちんと押さえておけば、あなたは依頼料金と引き替えに、個人情報と生活を守ってくれる心づよい味方を手に入れることができるでしょう。あくまで自分で対応できなくなった場合の最終手段ですが、おぼえておいて損はありません。
★こちらの記事もどうぞ!
・元探偵が明かす、個人調査の実態と個人情報漏れの予防法 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/9303 ]
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産経新聞 10月6日(土)17時40分配信
前に「元探偵が明かす、個人調査の実態と個人情報漏れの予防法」記事 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/9303 ] で、SNSなどでちょっと漏らしたプロフィールから“データ調査”という手法を使い、過去の結婚歴や職歴、戸籍データまであらゆる個人情報を引っ張り出してくる手口を解説しました。
そこから一か月も経たないうちに冒頭の事件が起きたり、全国の世帯の住所氏名をネット上で公開するサイト「住所でポン」が話題になりました。すこし毛色は違いますが、他人のパソコンをリモート操作して犯罪予告を書きこむウイルスで誤認逮捕があったりもしましたね。おちおち安心してスマホもパソコンも使っていられない時代になってきた気がします。
しかし怖いのは、なにもネットワークからの個人情報漏れだけではありません。前回に続いて今回はもっとアナログで直接的な危険があるもの‥‥尾行やゴミ持ち去りでバレてしまう“日常生活の個人情報収集”を手口&防御法セットで紹介したいと思います。
■個人情報が狙われる4つのパターン
【1】ストーカー、人間関係トラブル
【2】プロによる素行、浮気調査
【3】誤認、巻き添え
【4】被害妄想、自意識過剰
本題に入る前に、どんな理由で某国のVIPでもないあなたの個人情報が狙われるか。その代表的なパターンを挙げてみました。実行者が一般人かプロかによって【1】【2】で分かれます。ストーカーは単独犯が多く手口も稚拙だったりしますが、放置すると傷害事件になったりするので厄介です。プロによる調査は「依頼者がお金を払っている間だけ有効」という制限はありますがノウハウ、人材、機材すべてが強力です。
意外に見逃しがちなのが【3】の誤認、巻き添え被害。たとえばあなたが異性の同僚と飲みに行って仕事のグチを聞いただけでも、相手の恋人や配偶者が「こいつは浮気相手に違いない!」と思い込むパターンです。筆者は探偵時代に何百件と浮気調査を見てきましたが、徹底的に調べたあげく結局シロ(濡れ衣)だったというケースがたくさんあります。また、集合住宅に住んでいた場合、隣の部屋の住人が調べられる中で、あなたの生活パターンや住所氏名が副次的にバレてしまうケースもあります。
【4】は実際に狙われていないのに「街の住人みんなが24時間自分を監視している」「自分の頭の中に宇宙人が盗聴器を仕掛けた」という完全な妄想のパターン。これは探偵の守備範囲ではないので省いて、次ページから主に【1】【2】の手口と防御法を解説していきます。
■周囲と協力して撃退せよ!――張り込みの手口と対処
【張り込みとは】
自宅や職場近くでターゲットを見張り、その行動パターンや弱みを調べる手法です。素人はただ単に見張るだけですが、プロの探偵が張り込む場合はたいてい「証拠撮影」か「尾行」がセットになります。
【主な手口、見分け方】
・自宅や職場の“人の出入り”が見える場所に、定期的に怪しい人間やクルマがいる
・同じ人間かどうかよりも、同じ場所かどうかが大事なポイント(プロは人員を入れ替える余裕がある)
・集合住宅に住んでいる場合、見慣れない人間が敷地内に出入りしている
・不審なクルマが停まっていた場合、あまり見かけない他府県ナンバーである
・同じ地域のナンバーでも、プレートのひらがながレンタカーを意味する「わ」である
・夏や冬で人間が乗っていてるのに、エンジン停止してエアコンもかけていない(余計な音をたてないため)
・クルマの後部座席などに目張りがしてある(中から撮影しているのを隠すため)
・玄関ドアの隙間をよく見ると、丸めたチリ紙が挟んである(ドアの開閉を知るため)
・郵便受けの中身を荒らされた形跡があったり、届くはずの郵便物が消えたりする
【防御、対策法】
一般人ストーカーの場合は単に興味本位や自己満足(好きな人の傍にいるという安心感)が目的で、そこに郵便物や私物の盗難が絡んだりします。プロの場合はもっと細かく生活パターンの把握、証拠撮影が主な目的になります。ターゲットが一人暮らしですと「部屋の明かりが点く時刻」「電力メーターの回転する速度」「ドアの隙間に挟んでおいた紙片が落ちたかどうか」で、だいたいの生活リズムが分かったりします。
張り込みは自分がターゲットにされても比較的気づきにくいため、ともかく「おかしいな?」と感じたら疑ってみることが大切。ただし立っている人間や停まっているクルマの運転者をいきなり問い詰めるのはNG。相手が無実だとトラブルの元になる、ストーカーだと逆に喜ばせてしまうかもしれない、プロだと警戒されて分かりにくい調査法に切り替えられてしまう‥‥などあまり良い結果を生みません。
筆者が経験的に、張り込み時にやられて一番嫌だったのは「近隣一帯がすべて敵になる」ことです。小さい子供がいる家庭の奥さんだとか、マンションだったら住み込み管理人さんに「あそこに不審者がいてジロジロまわりを見ています」と報せてまわるわけです。張り込み者がストーカーだろうがプロ探偵だろうがしょせんは人間。どんなにうまい言い訳を用意していても、ひっきりなしに近所の主婦たちから「ここで何してんの?」と問い詰められるプレッシャーは想像を絶します。証言者が多いほうが警察も重い腰を上げやすいですし、この対策法が筆者的にオススメです(※効果を保証するものではありません)。
このほか、小型監視カメラを設置してさらにプレッシャーを与えたり、部屋の照明を留守中でも一定時間ごとにオンオフ切り替えてくれるタイプに換え、不在をバレにくくする方法もあります。可能であればいつも路上に停まっている不審車両のナンバーを記録しておくなど、客観的な証拠収集も忘れないでください。
■漫画のような尾行者はいない――尾行の手口と対処
【尾行とは】
ターゲットを徒歩やクルマで追跡し、その行動ルート、移動先を調べる手法です。まず張り込みでターゲットの出現を待ってから尾行に移行するパターンが多いです。
【主な手口、見分け方】
・自宅や職場を出るとき、一定の場所に人やクルマが待ち構えている
・自宅や職場を出た後、一定の距離で人やクルマがついてくる
・マイカーの後部底面(排気口やマフラーの近くが多い)に見慣れない機械が貼り付けてある
・その他、追尾してくるクルマが不審かどうかの判断基準は前項「張り込み」に準じる
【防御、対策法】
尾行も張り込みと同様、いかにして違和感に気付くかが最初のポイントです。本物のプロは漫画やドラマにあるような「黒サングラスをかけて電柱の陰から陰へ移動」なんてマヌケな尾行をしないので先入観にまどわされないでください。普通に携帯なんかをいじってるフリしながら、あなたのことなど眼中にないかのように追いかけてきます。人通りの少ない道ではやや離れて、見失いやすい人混みの中では距離を縮めてきます。尾行中は相手の足下を見ているため、いきなりあなたが振り向いても目があったりしません。ベテラン探偵であれば、よほど注意しないと気付くのは難しいでしょう。
逆に経験の少ない探偵やストーカー、あなたの奥さんが「ちょっとダンナを尾行してきてよ」と頼んだ友達などであれば、ボロを出しやすいので気付くのはわりと容易です。
尾行者が誰であっても「左折法」が見分け方として有効です。これは徒歩でもクルマでも、左(右でも構わない)に3回連続で曲がる‥‥というもの。同じ方向に3回曲がったらスタート地点に戻りますよね。こんな意味のない移動をして、それでもあなたを追ってくる人間がいれば、それは尾行者だと断定できます。同じ考え方で、移動スピードをランダムに変えてみて相手が追ってくるかどうかを見るのも有効。要は不自然な動きをすることで尾行者をあぶり出すわけです。
尾行者がその場でわかったとして、問い詰めるかどうかはケースバイケース。追いかけてきたのが恋人や奥さん、その友達といった知り合いならば「俺は浮気なんてしてないから」と話しあって誤解を解くのも良いでしょう。逆にまったく面識のない相手の場合、ちょっと判断に困ります。
まず相手がクルマならばナンバーをメモしておくこと。警察へ被害を届ける時に必要ですし、あとで陸運局に行ってナンバーから所有者を照会する役にも立ちます。
相手が徒歩でもクルマでも、不審な尾行者がいたら撒くのを優先したほうが良いかもしれませんね。急に振り返って逆方向に歩いたり、電車のドアが閉まる瞬間に下りるなど、予想されにくい手段で尾行を打ち切らせます。諦めきれない相手はまた別の日に尾行を試みようとしますから、その待ち伏せ中に前項「張り込み」と同じ対応で追い払いましょう。
ところで【手口、見分け方】のリストで“見慣れない機械”とは何だ?と思われたでしょうが、いわゆる発信器のことです。ケース内部にGPS発信器が仕込んであり、タイプにもよりますがタバコの箱程度の大きさと思ってください。それが強力なマグネットやガムテープなどでクルマの底面に仕掛けられ、バッテリーがある限り精度の高い位置情報を尾行者に教え続けます。昔は失尾(ターゲットを見失うこと)すると当てずっぽうで探しまわるしかありませんでしたが、この発信器の普及によって尾行や行動監視がとても簡単になりました。逆に、尾行される側にとっては脅威です。
あらかじめ自分のクルマをチェックして発見できればラッキーで、そのまま勝手に処分して相手に「行動監視がバレてるな‥‥」とプレッシャーを与えるもよし、バッテリー交換のため車庫へ忍び込んでくるところを「不法侵入の現行犯」として適切な対処するのも良いでしょう。発信器まで駆使するのは、ほぼプロの探偵に限られますから、彼らの得意な乱戦よりも“法律を盾にまっとうな対応”をするのが得策です。
■個人情報の宝庫――ゴミを収集&解析する「ガーボロジー」
【ガーボロジーとは】
個人や企業の出したゴミを持ち帰って解析することで普通では得られないような情報を調べる方法です。専門用語ではガーボロジー(Garbology)と呼ばれ、本来は学術的な研究にも活かされています。
【主な手口、見分け方】
・ゴミ捨て場付近に不審な人物、クルマを見かける
・実際にゴミ袋を、クルマやバイクに積み込んで走り去るのを目撃した
【防御、対策法】
探偵の調査で出番こそ少ないものの、なかなか強力な手法がこのガーボロジーです。普段どれだけSNSなどで個人情報を漏らさないよう注意している人でも、意外に生活ゴミまでは気が回らないもの。買物のレシートからネット通販の伝票、食べているインスタント食品や化粧品の銘柄、持ち帰ってきた仕事の書類などなど‥‥ゴミの中にはあらゆるお宝情報が眠っています。また、気持ち悪いハナシで恐縮ですが、一部の変態的ストーカーにとっては「異性特有のゴミ」なんかが非常に価値あるものらしいです。
張り込みや尾行と違って、自分から積極的にチェックしないとガーボロジー被害には気づけないのが難点。ストーカー被害に遭っていると自覚した時は、念のためゴミ収集日の早朝に不審者がいないかどうか何回かチェックしてみても良いでしょう。特にカギや扉が付いていない、野ざらしのゴミ捨て場を利用している人は要注意です。
対策としては、文字や数字情報の書かれているゴミは徹底的にシュレッダーで粉砕してしまうこと。復元も絶対不可能ではありませんが、ずいぶん安心感が増します。それでも出てしまう生活ゴミは、ちょっと面倒ですが収集車が来たときに直接渡しましょう。ゴミ捨て場にある時間がゼロならば、どんなストーカーでも手出しはできませんから。
ちなみにゴミを持ち帰る行為そのものは、民法に照らせば「ゴミに出した時点で所有権を失う」ため窃盗罪に該当しない、つまり違法でない‥‥筆者をはじめ探偵たちはそう教えられています。しかしゴミ捨て場がマンションの敷地内だったら不法侵入となり、また自治体ごとにゴミの持ち去りを禁止する条例があったりしますから、法的には非常にブラックに近いグレーだと思います。ゴミ捨て場に怪しい人間がいたら、まず役所や町内会、マンション管理人などと相談して、状況に合った対処をしてください。この場合も張り込みや尾行と同様、不審車両のナンバーを控えておくと役立ちます。
■意外な盲点――コードレスの会話は漏れ放題
【コードレス傍受とは】
暗号化されていないアナログ式のコードレス子機で通話している場合、その漏れ電波をキャッチして会話内容を聞いたり録音する行為です。盗聴と似ていますが、自分から積極的に機械を仕掛けるわけではないので正しくは「傍受」と呼びます。傍受そのものに違法性はなく、取り締まることはできません。
【主な手口、見分け方】
・自宅でやや古いタイプのコードレス電話を使っている
・子機を使ってプライベートな会話をすることがある
・半径数十メートル以内に、(イヤホンなどを付けた)不審者や不審車両を見かける
【防御、対策法】
近年は携帯電話が主流になりましたが、ご年配の両親と実家で同居している人などは、まだ自宅の電話機を多用していることも少なくないでしょう。しかし意外に知られていませんが、ひと昔前のコードレス電話は親機←→子機のやりとりをアナログ電波で行っていますから、市販の広帯域受信機(誰でも免許不要で買えます)を使って簡単に傍受できてしまいます。傍受した会話内容をネットで不特定多数にバラまいたり、会話内容をもとに脅迫行為でもされない限り、これを罪に問うことはできません。
心配な場合の対策は簡単で、まず使用中のコードレス電話の型番をメモしてメーカーに「傍受を防ぐデジタル暗号化がされているかどうか」を聞きます。対策済みだと答えられればOK、もし未対策の機種を使っている場合、最新機種はたいていデジタル暗号化済みですから買い換えれば済みます。
■究極の対策法!?――プロを味方に雇う
日常生活における個人情報の漏れ方と対処法を紹介してきましたが、「そんなに全部ひとりでやれないよ」とか「プロの尾行や張り込みに気づける自信がない」という人もいるでしょう。そんな時は発想を逆転して、究極の対策法――プロの探偵を自分で雇うこともできます。お金はかかりますが、実際ストーカー被害に悩んでいる人にとってはこれが一番手っ取り早いともいえます。なにせ警察はこれだけストーカー被害が広く認知された現在でも、あまり積極的に動いてくれませんので‥‥。
探偵は、発信器だとか盗聴器だとか物騒な単語が日常的に飛び交う現場で活躍する、いわば職業ストーカー。相手がアマチュアだろうがプロだろうが手口の大半を知り尽くしています。もともと探偵社の多くは「ストーカー対策」というカテゴリで依頼を受け付けていますので、浮気調査を依頼するよりも心理的なハードルは低いと思います。
たとえば仕事の帰りに張り込まれ、帰宅までの行動を尾行されているような疑念があったら、ありのまま探偵に話してください。依頼を受けた彼らはあなたの職場周辺を入念にチェックして、張り込みや撮影に適した場所の候補をピックアップし、そこに潜む不審者をこっそり調べ上げることができます。敵の正体がわかれば警察に届けるなり、弁護士を通じて内容証明でプレッシャーを与えるなど様々な対策がとれます。
ただし世の中には未熟な探偵社や悪質な探偵社も少なくないので、依頼時には信用できるところかどうか見極めることが大切です。いくつか簡単なチェックポイントを挙げておきますね。
【信用できる探偵社の判断ポイント】
・契約を急がせず、他社と比較してからゆっくり決めてください‥‥と余裕がある
・予算に応じた複数プランを提案してくれる
・ちゃんと調査したという証拠(報告書と写真、ビデオ)を出してくれる
・どんな質問にでも嫌がらず答えてくれる
信頼できない探偵社はその逆パターンです。
・今すぐ契約しないと大変ですよ!と相談者の不安を煽る
・やたら高い料金ばかり提示してくる
・契約書や報告書など「証拠として残る書面」を出したがらない
・プロに任せておけ!の一辺倒で質問に答えてくれない
これらのポイントをきちんと押さえておけば、あなたは依頼料金と引き替えに、個人情報と生活を守ってくれる心づよい味方を手に入れることができるでしょう。あくまで自分で対応できなくなった場合の最終手段ですが、おぼえておいて損はありません。
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