「人生のエンディングをどう迎えるか?」誰もがいつか人生で向き合う最大で最後の選択だ。まして、世界の主要国の平均年齢が上がり、圧倒的にシニア世代が占める現代。
11月3日公開、ジェーン・フォンダ主演の フランス映画『みんなで一緒に暮らしたら』は、まさにそんな現代の悩めるテーマをユーモアたっぷりに温かく描いた感動作だ。監督を務めたステファン・ロブラン氏のインタビューをお届けしよう。
■この作品をつくったきっかけは?
わたしはいつもベテラン俳優たちを集めて家族や友情などをテーマとした作品を撮りたいと思っていました。そして、特に年齢を重ねた人たちの社会的な依存と自立をテーマにしたものを撮れないかと考えていたのです。そういうテーマは映画ではめったに扱われません。
私が脚本を書き始めたとき、私の学生時代に、祖父母たちの健康状態が悪くなってきたのを思い出しました。その当時、私の両親は、彼らに対してどう対処していいかをあまりわかっていませんでした。なぜなら彼らは、その時のための準備を何も考えていなかったからです。
そこで、私は老年の友人たちが、自分たちで一緒に住む計画を立てる、という話を思いついて書き始めたのです。
■完成までに5年を要したとの事ですが、完成までに最も苦労した点、楽しかった点を教えてください。
製作資金集めは困難で、何年も苦労し危険な状態もありました。でもいざ撮影が始まると、とてもスムーズに進み、撮影は楽しく、役者たちのチームワークも良く、またみんなこの冒険を喜んで共有しようとしてくれました。
最も楽しくて印象に残っているのは、プールでの食事のシーンでクロードとジャンが喧嘩をする場面の撮影です。俳優たちがこのシーンに熱中してしまい、とてつもなく大笑いして、笑いが止まらなくなり、状況はとてもシュールになってしまったのです。プールの周りにいた観客の側のスタッフと、プールの中の“円形劇場”(闘牛場)にいた俳優たちと、という構図です。
■主演ジェーン・フォンダさんとのお仕事はいかがでしたか?
私にとって彼女は伝説の女優です。多くの有名な作品に出演し、アカデミー賞もとり、しかもフランス映画には約40年振りにカムバックと言う大きな意味がありました。彼女が承諾してくれるかどうかはわれわれの賭けでした。
彼女は脚本を気に入ってくれました。また、ジェラルディン・チャップリンや他のフランスの名優たちと共演するアイデアを気に入ってくれて、この映画のキャスティングの最後の段階で決まりました。
最も印象に残っているのは、ジェーン・フォンダが最初にパリにやってきたとき、いくつものトランクにこの役のために提案したい衣装をぎっしりと山のように持ってきたことです。私たちはカメラテストやリハーサルを何度もしました。
彼女は少し気難しいところもありますが、とてもまじめで勤勉でした。そして、彼女はアメリカからやって来て、一瞬のうちに私のストーリーの中に入り込んでしまうという、まさに驚くべき、素晴らしい女優でした。
■平均年齢74歳という俳優陣の中に、若手であるダニエル・ブリュールを世話役として起用した点については何か意図はあるのでしょうか?
当初なかなか製作資金が集まらず、何度も暗礁に乗り上げた頃に、ドイツの熱心な出資者が名乗り出てくれて、そのおかげで企画がうまく進み始めました。そこで、博士論文を準備中の若い学生でお世話係でもあるディルク役を、ドイツ人という設定に書き換えました。
そしてすぐにこの役にうってつけのダニエル・ブリュールが見つかったのです。
■この作品を通して世の中に伝えたいメッセージはありますか?
映画では普段あまり語られず、多くの人の心の琴線に触れるもの、老年の俳優たちのアンサンブルが楽しくて美しい映画を撮りたいと最初から思っていました。
私はまず老年の人たちの依存についての問題から始めることにしました。遠近を問わず多くの人が抱えている問題です。そして我々の世の中の高齢化は次第に迫りつつあり、ベビーブームの人たちも定年を迎える今日で、高齢者がまた一段と増えるのです。そしてそんな彼らは、何か対策を発明して、彼らの老後をより人間的にするために計画を練るのです。
私は子供たちが親の老後の道を決めてしまうのは残念だと思います。老人たちがたとえ、いろいろ問題があるとしても、彼らにだって自由は残されていますから。尊厳だってあるのです。今こそ、我々は老後の問題を考えて、それに対して方法を生み出し、より人間的でより応用の利く解決策をそれぞれが生み出してほしいと思っています。
作品情報
『みんなで一緒に暮したら』
監督:ステファン・ロブラン
出演:ジェーン・フォンダ、ジェラルディン・チャップリン、ダニエル・ブリュール、ピエール・リシャール、クロード・リッシュ、ギイ・ブドス
公式サイト
配給:セテラ・インターナショナル/スターサンズ
11月3日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
2011年 第64回 ロカルノ国際映画祭 特別招待 クロージング作品
(C)LES PRODUCTIONS CINEMATOGRAPHIQUES DE LA BUTTE MONTMARTRE / ROMMEL FILM / MANNY FILMS / STUDIO 37 / HOME RUN PICTURES
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わたしはいつもベテラン俳優たちを集めて家族や友情などをテーマとした作品を撮りたいと思っていました。そして、特に年齢を重ねた人たちの社会的な依存と自立をテーマにしたものを撮れないかと考えていたのです。そういうテーマは映画ではめったに扱われません。
私が脚本を書き始めたとき、私の学生時代に、祖父母たちの健康状態が悪くなってきたのを思い出しました。その当時、私の両親は、彼らに対してどう対処していいかをあまりわかっていませんでした。なぜなら彼らは、その時のための準備を何も考えていなかったからです。
そこで、私は老年の友人たちが、自分たちで一緒に住む計画を立てる、という話を思いついて書き始めたのです。
■完成までに5年を要したとの事ですが、完成までに最も苦労した点、楽しかった点を教えてください。
製作資金集めは困難で、何年も苦労し危険な状態もありました。でもいざ撮影が始まると、とてもスムーズに進み、撮影は楽しく、役者たちのチームワークも良く、またみんなこの冒険を喜んで共有しようとしてくれました。
最も楽しくて印象に残っているのは、プールでの食事のシーンでクロードとジャンが喧嘩をする場面の撮影です。俳優たちがこのシーンに熱中してしまい、とてつもなく大笑いして、笑いが止まらなくなり、状況はとてもシュールになってしまったのです。プールの周りにいた観客の側のスタッフと、プールの中の“円形劇場”(闘牛場)にいた俳優たちと、という構図です。
■主演ジェーン・フォンダさんとのお仕事はいかがでしたか?
私にとって彼女は伝説の女優です。多くの有名な作品に出演し、アカデミー賞もとり、しかもフランス映画には約40年振りにカムバックと言う大きな意味がありました。彼女が承諾してくれるかどうかはわれわれの賭けでした。
彼女は脚本を気に入ってくれました。また、ジェラルディン・チャップリンや他のフランスの名優たちと共演するアイデアを気に入ってくれて、この映画のキャスティングの最後の段階で決まりました。
最も印象に残っているのは、ジェーン・フォンダが最初にパリにやってきたとき、いくつものトランクにこの役のために提案したい衣装をぎっしりと山のように持ってきたことです。私たちはカメラテストやリハーサルを何度もしました。
彼女は少し気難しいところもありますが、とてもまじめで勤勉でした。そして、彼女はアメリカからやって来て、一瞬のうちに私のストーリーの中に入り込んでしまうという、まさに驚くべき、素晴らしい女優でした。
■平均年齢74歳という俳優陣の中に、若手であるダニエル・ブリュールを世話役として起用した点については何か意図はあるのでしょうか?
当初なかなか製作資金が集まらず、何度も暗礁に乗り上げた頃に、ドイツの熱心な出資者が名乗り出てくれて、そのおかげで企画がうまく進み始めました。そこで、博士論文を準備中の若い学生でお世話係でもあるディルク役を、ドイツ人という設定に書き換えました。
そしてすぐにこの役にうってつけのダニエル・ブリュールが見つかったのです。
■この作品を通して世の中に伝えたいメッセージはありますか?
映画では普段あまり語られず、多くの人の心の琴線に触れるもの、老年の俳優たちのアンサンブルが楽しくて美しい映画を撮りたいと最初から思っていました。
私はまず老年の人たちの依存についての問題から始めることにしました。遠近を問わず多くの人が抱えている問題です。そして我々の世の中の高齢化は次第に迫りつつあり、ベビーブームの人たちも定年を迎える今日で、高齢者がまた一段と増えるのです。そしてそんな彼らは、何か対策を発明して、彼らの老後をより人間的にするために計画を練るのです。
私は子供たちが親の老後の道を決めてしまうのは残念だと思います。老人たちがたとえ、いろいろ問題があるとしても、彼らにだって自由は残されていますから。尊厳だってあるのです。今こそ、我々は老後の問題を考えて、それに対して方法を生み出し、より人間的でより応用の利く解決策をそれぞれが生み出してほしいと思っています。
作品情報
『みんなで一緒に暮したら』
監督:ステファン・ロブラン
出演:ジェーン・フォンダ、ジェラルディン・チャップリン、ダニエル・ブリュール、ピエール・リシャール、クロード・リッシュ、ギイ・ブドス
公式サイト
配給:セテラ・インターナショナル/スターサンズ
11月3日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
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