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「バンギャルちゃんの日常」発売記念・バンギャル漫画家対談

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『バンギャルちゃんの日常』(エンターブレイン)発売を記念して、作者の蟹めんまさんと、帯にコメントを寄せている竹内佐千子さんとの「バンギャル×バンギャル」対談が実現! 学生時代の思い出から社会人になってからのヴィジュアル系的エピソードまで、ふたりのトークは止まらない!

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■ふたりは同世代バンギャル

――竹内さんは『バンギャルちゃんの日常』の帯にコメントを寄せてらっしゃいますが、漫画を読んだご感想は?

竹内佐千子(以下・佐):私、バンギャルになったのが高校2年生の頃だから、同世代の人より少し遅いんです。それで2つ下くらいの友達が多いんですよね。PIERROTとDIR EN GREY(当時・Dir en grey)が台頭してきたくらいの時期かな…。

蟹めんま(以下・め):じゃあほとんどおなじ時期ですね。


佐:だから(「バンギャルちゃんの日常」を)読んでるとドンピシャ過ぎるところがたくさんあるんですよ。テックス伊藤さん(※1)の話とかもうヤバいですね…。

め:あれは全然脚色してないんです。本当にほぼそのまま漫画にしてるんです。すべてが名言でした…。

佐:コスプレの話もすごい面白くて…、当時やっぱりみんな同じこと考えてたんだなあ…って。

め:コスプレが進路を左右してしまうってありませんでした? 金髪にしたいがために、頭髪自由の学校に進学したりとか。

佐:あ、ウチはOKの学校でしたよ。

め:うらやましい…。そういう学校はやっぱりバンギャルさんが多かったんですか?

佐:結構いたかも…後輩にバンドマンのコスプレで登校してる子がいて(笑)。下駄箱に厚底ブーツが入らなくて、靴箱の横にいつも厚底ブーツが置いてある…みたいな。

め:制服はなかったんですか?

佐:私服でしたね。白い上履き着用以外は特に無い学校でした。

め:そういう学校って東京にはよくあるとは聞いてたんですけど、そんなの都市伝説だと思ってました…。というか当時は羨ましいことは全部都市伝説だと思うことにしてたんです。

(※1)テックス伊藤さん…警備会社・株式会社テックスの社長。ヴィジュアル系黎明期からライブの警備を担当し続けており一部のファンの間では有名人。『バンギャルちゃんの日常』にもゲストとして登場。

佐:私が東京生まれで東京育ちだったからなんですけど、奈良のくだりとか超おもしろくて。かわいくてかわいくてしょうがなくて…。

め:LAREINEのメジャーデビューの時にノベルティで号外みたいなのが配られてたんですけど、それが関東圏でしか配られてなかったみたいで、当然奈良の片田舎では扱ってないんですよ。それを嘆いてたら、地元のCDショップの仲の良い店員さんが超がんばって入手してくれたんです。お店とは関係ない、おそらく個人的なツテを使って手に入れてくれたと思うんです。そんなこともあって、いっときそのお兄さんのことがほのかに好きでしたね…。

佐:いい話だ…。

め:それに、都会では「仲の悪いバンドのファン同士も仲が悪い」みたいな都市伝説があったんですけど、田舎はそういうのなかったんですよ。何故ならバンギャル自体が少ないから。例えば多少バンドの趣味が合わなくてもヴィジュアル系のファンっていうだけで仲良くなるんですよ。学校が違う子でも「友達の友達がヴィジュアル系が好き」って聞いただけで「紹介して!」って。

佐:学校の後輩にライブで偶然出会ったりとかはありましたね。こっちはバンドのコスプレしてるから、「何やってんですか先輩!」「そっちこそ!」っていう(笑)。

■フルカラーなのに黒歴史

――お二人ともヴィジュアル系バンドマンのコスプレをして集会に出ていたんですよね。

佐:(当時のプリクラ手帳を見ながら)これは黒歴史ですね…。

め:フルカラーなのに黒歴史…。当時みんな文通の最後のページにプリクラを貼って。友達がみんなに配ったりして。

佐:自分のカラーコピーをまわしてたりとか。

め:そうです! カラコって呼んでました。

佐:あーそうだカラーコピーの両面にテープをつけて。漫画にもありましたよね。

め:綺麗に撮れたプリクラはそうやってコピーしてました。

佐:(手帳をめくりながら)名刺も入ってました。これは「京様激愛虜(※2)」て書いてありますね…。

め:わたしも名刺手作りしてました。今日持ってくれば良かった…!

佐:(さらに手帳をめくりながら)うわ! このチケット、Psycho le Cemuが「from姫路」になってる!

め:こういうの集めて、資料館とか作りたいですね。竹内さんは『おっかけ!』(ブックマン社)にもあるように最初に行ったライブハウスが高田馬場AREA(※3)なんですよね…。


佐:そうです。学校帰りに当日券で入ったりしてましたねー。放課後「三年生を送る会」みたいなのやってる間に、走ってAREAに行ったりもしましたね。当時のビデオテープが残ってて、みんな合唱してるのに私と友達2人だけいない、みたいな。

め:それで思い出したんですけど、学生の時に教師に反抗したことがあって、当時親の携帯電話を借りて、ライブ友達と連絡を取ってたんですよ。GACKT(当時・Gackt )がソロデビューしたばっかりで、そのライブに行くために、学校が終わって駅で友達と携帯で連絡とってたら、ちょうどその現場を教師に見つかってしまって(笑)。「何してるの! 携帯は校則違反! 没収!」って言われて、でも携帯がないと友達と連絡取れないから、パニックになって電車が来た瞬間ダッシュで電車に乗ったんですよ(笑)。

佐:(笑)

め:今思えばひどかったですね。半泣きになって大阪城ホールに行ったという…。それまでけっこう学校ではおとなしいタイプで、先生にも反抗したこともないから、ライブ中も「先生ごめんなさい…。」って罪悪感でいっぱいで。次の日当然携帯没収されましたけど。うちの学校、校則が厳しくて卒業するまで返してもらえなかったんですよ。

佐:えーっ!?

――田舎の学校はわりとありますよ。ウチの学校も学期末まで返してもらえなかったです。

め:クラス内で日陰族だったというのもあって「先生~めんまさんが学校に変なもの持ってきてます~」てチクられるんですよね。学校にCDを持ってきてたら没収なんで、たしかPlastic Treeの「絶望の丘」は2回没収されました。当時カセットテープって何回も聞いてるとすぐにダメになっちゃうから、CDを直接聞いてて。それがないと学校に行けない子だったから…。親も「これがないとウチの娘はダメになる」とわかってるから買ってくれたんですよ。他にもいろいろ没収されてたんですけど、だから卒業式の日に没収されたものがダンボール5箱分くらいドカンと帰ってきて(笑)。

――竹内さんはその手のことで怒られなかったんですか?

佐:芸術系の学校だからか、あんまりなかったですね。こじらせた奴が修学旅行とセックスマシンガンズのFCイベント旅行と本命のワンマンがかぶってて、「修学旅行いきません!」って言い出して、先生がたしなめたらカンペン投げてましたね「行くっつってんだろ!」って。で、結局私が写真で本人のパネルを作って、パネルだけ参加という形に。

め:レベルが高い…さすが美術系の学校ですね。カンペンってのも懐かしいですけどね。そういえば昔私カンペンに書いてました「灰銀狂愛虜ナンタラ」って。

佐:人形持ってる人も多かったですよね。グルーミーとかをギッチギチに改造して原型がなくなるくらいにして。

め:血みどろグルーミーみたいなのが流行ってましたよね。

(※2)京様激愛虜…虜とはDIR EN GREY(Dir en grey)のファンの総称。メンバー名+虜で「○○ファン」という意味になる。つまり「京様激愛虜」は「ボーカルの京様さんの熱狂的なファン」くらいの ニュアンスだと思います。なお当時Dir en greyは灰銀と略されることもよくあったので「灰銀狂愛虜」は「Dir en greyの熱狂的なファン」くらいの意味になります。多分。
(※3)高田馬場AREA…ヴィジュアル系バンドがよく出演するライブハウス。西友の地下というのどかすぎる立地。

■元バンドマンが職場に!mixiに!

――バンドやめたから他の職業につくっていう話も周囲でたまに聞きますね。職場や取引先に元○○がいる! とか。

佐:私、好きだったバンドマンが、mixiをやってるのをたまたま発見して、そしたら今は就職して結婚して子供もいるみたいで、バンドをやめてもちゃんと生活して生きてたんです。この人のことを好きで本当に良かったなと思いました(笑)。

め:私の前いた会社に入ってきた人が元メジャーバンドのメンバーで、社長が入社日に「コイツ、前はヴィジュアル系バンドをやっていたらしいぞ!」とふざけて言ったら「昔のことですから…」って言ってるのに社長が「じゃあなおさら言っていいじゃないか! 誰も覚えてないだろ!」ってバンド名を言ったら!「…知ってる!」みたいな。

佐:90年代はバンドがホントに佃煮みたいにいたから、元バンドマンも多いですよね。

め:私、就職してから少しの間ヴィジュアル系から遠ざかってたんですが、それがきっかけで出戻ったんです。その人が元バンドマントークを駆使して音楽専門学校の仕事をとったんですよ。その案件の担当になって、音楽専門学校の仕事をしてるうちに、なぜか呼び覚まされ…でも仕事忙しすぎるからライブにいけないし、もうだめだー! って仕事やめたんですけど。

佐:そっち辞めちゃったんですか(笑)。引き金になってしまったと。

――就職や結婚がきっかけでヴィジュアル系から離れちゃうケースは多いですけど、逆に仕事がきっかけで戻るということもあるんですね…。

佐:私もヴィジュアル系に戻る日はくるのかなあ…。いつか来ると思うんですけどね。

■テニミュへの誘い

め:「竹内さんは現在はテニミュ(テニスの王子様ミュージカル)一色ですか?」

佐:「今はそれにK-POPやらなにやらで色々大変なことに…」

――まだ韓国遠征はしてないんですか?

佐:「今は中国の方にハマってるんで、行くなら台湾とか上海ですね。追っかけ体質って絶対あると思うから」

め:「それはあると思います!」

佐:「おっかけの仕方がわかってるし、そこでの友達の作り方もわかってるから。とりあえずわさっと作って情報を集めて…みたいな。出版業界ってテニミュファンが多いんですよ、K-POPもそうですけど。友達が友達を呼んで、その友達が連れてくる仲間がまた編集者で…漫画家で…それでみんなで仕事しよう! 1冊作ろう! って話になって。おっかけしてると仕事が増える!(笑)」

め:「いいですねえ…それ。趣味と実益の両立じゃないですか…。テニミュは生で見たことはないんですけど、ニコニコ動画でよく見てました。私、ニコニコ動画が大好きで、最初のアカウント配布の時も必死に取りました。1000番台のアカウントとか持ってましたから」

佐:「すげえ!(笑)そのころは2代目ですかね」

め:「そうです。ちなみに私はテニミュ負傷しました。動画見てて笑いすぎて呼吸困難になって椅子から落ちたんですよ。それで手をバッサリ切って医者に行き…」

佐:「超おもしろいじゃないですかそれ!」

め:「その後はもうもうテニミュテニミュですよ。でも生で見れてないので…」

佐:「めんまちゃんもテニミュ行こうよ! 冬から7代目が始まるからちょうどいいよ! チケットとっておくね!(超笑顔)」

め:「行きたいです!」

佐:「あとテニミュといえば生写真なんですよね。チェキじゃなくて。ジャージ、制服、私服、春の木漏れ日バージョンの4枚セットとかあるんです。追加写真もでたり。生写真を学校セットで買うと特典がついてたり」

め:「ヴィジュアル系のようだ…。私2代目大石(鈴木裕樹)にドハマリして、大学が関西だったから京都の太秦の映画村の『ゲキレンジャー』のショーに行きましたよ」

佐:「そういう風に好きだった過去があるならやばいと思います。バンギャルからテニミュってホント多いですから」

――ヴィジュアル系・特撮・テニミュ・宝塚・KPOP・ジャニーズはホント親和性高いですよね。回遊魚のよう。あとPerfumeやももクロのような女性アイドル方面に行く人もいますよね。

佐:「テニミュを卒業しても俳優業を続けるから、それを追いかけるのが大変で…。それで仮面ライダーから朝ドラも昼ドラもチェックしないといけないから…」

め:「大変ですね…」

■増えすぎる「○○会」

佐:「あと最近、握手会みたいなファンとの交流イベントも形式が増えすぎて、握手やハイタッチだけじゃなくって、「ハグ会」や「なでなで会」、「ささやき会」とか「脈はかり会」とかあるじゃないですか、それが面白くて仕方なくって、もうその対象が好きでもないのに行ってみたいってなってくるんですよ。このあいだもアイドルが流したそうめんをファンが食べるっていう「流しそうめん会」があったと聞いて、行きたくて仕方がなかったです」

め:「ささやき会とか絶対体臭わかっちゃうからこわいですよ! 友達曰く、バンギャルが垢抜けたのは、そういうふうに増えたからだって。リリースごとにインストや握手会があるから、CDの発売日と同時に美容院に行く子もいるそうです。ホントそんなに近くにバンドマンがいるとか想像しただけで…無理です」

佐:「だからホント、この嫌な空気があの子に触れてしまう!ってなっちゃうんですよ。でも行かなきゃ、買わなきゃいけないと。買わないとあの子の収入に係るし、動員も必要じゃないですか!」

――次の日のニュースに「イベントにXXX人来場!」って書かれてほしいですしね。

佐:「やっぱり数字がモノを言う世界なんですから…。プロマイド買うのも、誰が何枚売れたとか集計もされてるでしょうし。お気に入りの子を買ってあげたいんです」

め:「そうそうそう」

佐:「本人のモチベーションにかかわると思うんですよ。こっちも重苦しい愛をぶつけてしまいますけどね…」

――っていうかどこまでぶつけていいのかわかんないですよね…。全然「キャーキャー」言われなくても「僕人気無いのかな」ってなるでしょうし、言われすぎるとウザいかもしれないですけど!

佐:「ホントに…昨日(※4)も双眼鏡であの子のジャージ姿を目に焼き付けておかないといけないと思って…卒業公演だったんで。そしたらあの子はこんな気持ち悪いファンに見られてるって気づいたら…だんだんかわいそうになってきて…なんかそしたら涙が出てきて…そして、写真集を買いましたね」

め:「お金を払えば!」

佐:「多少気持ち悪いのも許してもらえるんじゃないかって」

(※4) 対談を収録した日はテニミュの千秋楽の翌日でした。お気に入りの子の卒業公演だったそうで…。

■おっかけは無駄じゃない!

め:「それで思い出したんですけど私、大学生の頃バンドマンにファンレター出すときに、手紙に添えて「飛び出すカード」を作ってて、本人の似顔絵を飛び出すようにしたりしてました。今考えるとどうしてそんなことをしたのか…」

佐:「なんか自分の持ってる能力で、どうにか相手を喜ばせたいっていう想いが、気持ち悪い方向に行くんですよね」

め:「でもそういうことを続けてるとなんだかんだで職業につながったりしますし。そのファンレターを毎回作ってて『次はどうやって驚かせてやろうかな』と生きがいみたいになっちゃってて。それであとあと広告代理店に就職した時に変な折チラシとか作りまくったりして、ある意味役にたってるなと」

――学校や地元じゃないところ、全国に知り合いがいるから、その人脈が想像しないところで生きたりしますからね。

佐:「バンギャルやってた頃は、「こんなの大人になったらなんの役にも立たない」って言われてたし、自分でも無駄だと思ってた。でもそれが今の仕事につながってたりしてて、好きなことをおっかけるって無駄じゃなかったんだって今になってすごく思います』


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