Quantcast
Channel: Ameba News [アメーバニュース]
Viewing all articles
Browse latest Browse all 171471

世界に誇る「日本の自動販売機」のお話

$
0
0
海外の方が日本に来て、驚くことの1つに「自動販売機の多さ」があります。これほど街に自動販売機があふれている国はほかにありません。

自動販売機について、富士電機株式会社 食品流通事業本部 自販機事業部 管理部の向出光男さんにお話を伺いました。富士電機さんは自動販売機の製造・販売の最大手メーカーです。



■サンプル商品を液晶表示する最新機種!

――最近、商品サンプルが実物ではなくて、液晶画面に表示されているという最新鋭の自販機が駅に設置されていますが、あれは富士電機さんの製品ですか?

向出さん 企画はJR東日本ウォータービジネスさんで、製造は弊社が行っています。

――最初に駅で見た時はビックリしました。

向出さん そうですね。インパクトありますよね。おかげさまでご好評を頂いております。

■自動販売機の製造・販売は大阪万博から

――自動販売機の製造、販売を始めようとしたきっかけは何だったのでしょうか。

向出さん 1969年の牛乳自動販売機が弊社の第1号機です。さらに、翌1970年の大阪万博にカップ式コーヒーの自動販売機を230台設置し、設置・メンテナンスの運営ノウハウを蓄積しました。

――なぜ自販機だったんですか?

向出さん それまで弊社の三重工場では家電製品を中心に製造・販売していたのですが、新規事業を考えていました。その時に「自動販売機」が俎上(そじょう)に上がったんですね。大阪万博の開催は弊社にいい機会を与えてくれたわけです。

――現在、自動販売機の設置からメンテナンスまで、富士電機さんで全部やっているのですか?

向出さん 設置やメンテナンスはいろいろな飲料メーカーさんやオペレーターさんも手がけていますが、弊社としても、自動販売機の企画、設計から製造、設置、メンテナンスまで一貫したサポート体制を整えています。

■自動販売機は年間約30万台も!

――自動販売機は年間何台ぐらい製造・販売していますか?

向出さん 直近では業界全体で年間約30万台です。

――この数字は年々増えているんでしょうか?

向出さん いえ、ここのところ微減傾向が続いています。最近の動向として生産台数が最も多かったのは2004年~2005年です。

――なるほど。微減傾向にはどういう理由があるのでしょうか?

向出さん まず新しく自販機を設置する場所が少なくなってきているということです。既存の自販機の置き換え需要がほとんどという状況になっていますので。

――海外へ輸出したりはしないのでしょうか。

向出さん もちろん海外でも使っていただいております。

――どういった国ですか?

向出さん 弊社で言うとアジア地区が中心となります。

――海外ならではの工夫などはされますか?

向出さん 国や地域により言語やお金、電源に加え、販売商品もがちがいますので、それぞれの対応により仕様が異なります。また、それぞれの飲料メーカーさんによって仕様の要求が異なってきますので対応する必要があります。

――マスプロダクション(大量生産物)っぽいのに、受注生産のような製品なんですね。

向出さん そうですね。ちゃんと冷たい飲料や温かい飲料を確実に販売するといった基本機能は同じですが、例えば、変わった形状のペットボトルを販売するための対応など工夫が必要です。当然、お客さまのブランドデザインの対応が必要です。

■ペットボトルを販売するのは難しかった!

――自動販売機の技術的な革新について教えてください。これはエポックメイキングだったな、という技術はありましたか?

向出さん そうですね。まず「ペットボトル」でしょうか。これを販売できるようにするのは大変に難しかったですね。

――えっ、そうなんですか?

向出さん ペットボトルは従来の缶に比べて格段に柔らかい物です。これ(500ml)を30本、縦に積んだらその重さは15kg以上になります。この重量に一番下のペットボトルが耐えられるようにしなければなりませんでした。柔らかい物を販売するってとても難しいことなんですよ。みなさんがお気づきにならないところで技術者が苦労しています(笑)。地味な基礎技術の積み上げが現在の自動販売機を実現しています。

■とにかく省電力の工夫をしなくては!

――なるほど。近年ではどんな技術革新がありましたか?

向出さん やはりエコですね。1990年代から省エネ自販機の開発に取り組んでいますが、2002年に省エネ法の特定機種に指定されて以来、さらに技術開発を積極的に進めています。

「2005年度を基準に、2012年度までに使用電力を37%削減」というのが業界の目標でしたが、2011年度に39.9%を達成しました。

――それはスゴイですが、どんな仕組みで実現しているんですか?

向出さん 例えば2008年度に導入した「ヒートポンプ機能」です。冷却時に発生する排熱を、温める機能に利用します。このヒートポンプ機能で、大幅な省エネを実現できました。

――ほかにはどんな機能が追加されていますか?

向出さん 「ピークカット」という機能があります。全国で消費電力の多い時期(7-9月の13時-16時)に冷却機能を使わないようにします。

――自動販売機も頑張ってるんですねえ。

向出さん そうですね、頑張ってますよ(笑)。やはり東日本大震災後の電力不足は大きな影響を与えました。業界的にも省電力は焦眉(しょうび)の急でした。

■日本人は自動販売機が好き!?

――日本でこれだけ自販機が普及しているのはどういう理由でしょうか。

向出さん 犯罪の少ないことが大きな要因でしょうね。海外の方が驚くのは、どうして日本では自動販売機は壊されないのかということです。日本では自販機の事故に遭う率はもともととても低かったですが、最近また低くなっています。

――なぜでしょうか。

向出さん 業界の取り組みとして機械の防盗性能が向上しているのも一つの要因ですが、自販機の中に大金を置くことが少なくなっているということも大きいと思います。電子マネーの普及で実際に現金を出して物を買わなくていいようになっています。この傾向はますます強まるでしょう。

――海外の方が見ると、日本の自販機の多機能さ、その進化に驚くようですが。

向出さん 恐らくですが、日本人は自動販売機が好きなんだと思います(笑)。人間の作業を機械に代替すること、そういった機械を作ること、その機械を使うこと、日本人はみんな好きなんじゃないでしょうか。好きだからこそこれほど普及しているんだと思います。

――自販機の製造・販売の仕事をしていて楽しいことは何ですか?

向出さん 自分たちが企画を立て、製造した機械が日本全国で使われるということです。弊社の名前が一般の方々に知られることはあまりないかもしれませんが、それでも誇らしい気持ちになりますよ。

今回の取材で、自動販売機は私たちの知らないところでコツコツと進化を続けていることがよくわかりました。みなさんは自動販売機を頻繁に利用しますか?

(高橋モータース@dcp)

【関連リンク】
もし1日だけ入れ替われることができるなら誰がいい?


『ギネス世界記録』に挑戦するにはどうすればいいの?


素晴らしきカレイドスコープの世界



Viewing all articles
Browse latest Browse all 171471

Trending Articles