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崔洋一監督、木下惠介作品を「現代の中国の若者に見せたい」

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 第13回東京フィルメックスで開催されている「木下惠介生誕100年祭」で11月25日、岩下志麻、加賀まりこ、菅原文太らが出演し1963年に公開された「死闘の伝説」が上映され、日本映画監督協会理事長を務める崔洋一監督によるトークイベントが行われた。

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 映画の舞台は戦争末期。北海道の農村を舞台に、疎開してきた一家が村の地主の息子との縁談を拒否したことから保守的な村でのいさかいに巻き込まれていくさまを描く。

 崔監督の木下作品との出会いは、8歳のとき。1957年に公開された「喜びも悲しみも幾歳月」を満員の映画館で鑑賞したという。「当時の子どもたちはどんな映画でも見ていましたね。ある種の社会現象を起こした作品ですし、カラーが子ども心をワクワクさせてくれました」と振り返る。

 また、自らが助監督として師事した大島渚監督も木下作品の影響を強く受けたのではないかと分析。「木下監督の『日本の悲劇』と大島さんの『愛と希望の街』はよく似ていると思います。母性への独特の感覚、戦後の日本人の変化といった部分で大島さんの人生と重なるものが木下作品にあったのでは。昔、大島さんと飲んでいて『お前は小津(安二郎監督)が好きか? 木下が好きか?』と聞かれたことがあり、真意が分からぬまま『当然、木下監督が大好きです』と答えたら喜んで『おれもだ! 木下さんは天才だ。おれは小津は嫌いだ』と言われたことがあった(笑)」と懐かしそうに明かした。

 「死闘の伝説」は西部劇からの影響も指摘されるが、崔監督は「掟から外れた者を徹底的にいじめ抜く、弱い者がさらに弱い者を探すさまが描かれる」と同意する。だが「一方で、このことを否定的に捉えるというよりも怜悧(れいり)に見つめるもうひとつの視点がある」と展開。「西部劇なら悪を倒して新天地に去って終わりだけど、そうはならないところが木下監督の底意地の悪さ。映画は大衆のものだけど、きちんと大衆との距離を持って描いている」と木下監督ならではの独自の視点について説いた。

 さらに、本作に現代の日本の社会に通じる部分も感じているようで「いまの世相とつながりますね。実証・検証がないまま事実がねじ曲げられていくネットの社会そのもの」と語った。今回の特集上映では、本作を含め5本の作品で新たに英語字幕をつけたニュープリントが製作された。崔監督は木下監督が巨匠と称されつつも黒澤監督、小津監督らと比べて海外での知名度がいまだ低いという点にも触れ、「改めてもっとしっかり位置づけをさせないといけない存在。今日の作品はいまの中国の若者にそのまま見せたい作品」と熱弁をふるった。

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