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仲代達矢、木下惠介と黒澤明の違いを語る

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 第13回東京フィルメックスで11月24日、「木下惠介生誕100年祭」と称し厳選された木下作品24本が紹介されるなか、都内の劇場で「永遠の人」(1961)が上映され、本作に出演した仲代達矢が登壇。木下作品の魅力、さらに同時代の巨匠・黒澤明監督との思い出などについて語った。

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 仲代にとって、全49作ある木下作品のうち今作が唯一の出演作。戦争で引き裂かれた小作人の娘と恋人、そして戦地で足を負傷した地主の息子が繰り広げる30年に及ぶ愛憎劇を描き出す。

 観客とともに鑑賞した仲代は、「自分の出た作品ですが、時空を超えて素敵な作品だなと思いました」と感慨深げに語る。劇中、高峰秀子演じるヒロインを殴るシーンがあるが「木下先生からは『仲代くん、思い切ってぶん殴って。あの女、憎たらしいでしょ?』と言われた」と告白。一方で、「高峰さんからは『仲代くんって力が強いのね。芝居はヘタだけど』と言われました(笑)。高峰さんは、舞台出身の私に映画の難しさを教えてくれた先生。いま見ても、つくづくうまいなと思います」と話した。

 「永遠の人」への出演前後で、仲代は「人間の条件」(小林正樹監督)、「用心棒」「椿三十郎」(ともに黒澤監督)などにも出演。「俳優座」所属だった仲代は、当時の映画界の「五社協定」(専属契約の映画会社の作品にしか出演できないルール)に縛られることなく、木下・黒澤両監督のほか、成瀬巳喜男、市川崑ら名匠の作品に数多く参加した。「いい監督にめぐり合うことができたのは20代の幸運でした」と振り返る。

 当時、映画界は黄金時代で多忙を極めたといい、「人間の条件」は6部構成だったため、各部の間には準備期間が半年設けられた。黒澤監督が、木下監督の一番弟子でもあった小林監督に「仲代を貸してくれないか?」と懇願したそうで、小林監督は「(役どころが)全然違うからいいよ」と快く仲代を“貸し出し”、「用心棒」と「椿三十郎」が撮影されたという。

 この日のトークショーでは、木下監督の遺作「父」で助監督を務めた本木克英監督が司会を務めた。本木監督は、「木下監督から『あんなに勇ましい映画を撮るのに黒澤はウチに来ると女々しく泣くんだよ』と聞かされた」と巨匠の意外な一面を明かした。仲代は、この2人について「映画黄金時代の両巨頭だけど個性は違う」と分析。「木下先生は真正面から人間を肯定する作品をつくりつつも、斜めから人間の業や負の部分を見つめるところがあり、黒澤監督よりも屈折した目で見ていたのかも。木下先生はニヒリズムの人。黒澤さんは堂々の正義漢」と評した。

 その鋭い批評眼は、現在の作品づくりの現場にも向けられた。「僕もテレビに出ているので、テレビの悪口を言うのは天に唾することになりますが……」と前置きを入れ、「いまは効率の時代になってしまった。でも作り手がつくりたいものをつくるんだ、ということが大事。もうすぐ80なのでもう言いたいことを言います」と熱く語り、客席からは大きな拍手がわき起こった。

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