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もしも科学シリーズ(19)もしも恐竜と暮らすなら

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映画「ジュラシック・パーク」では、現代に生きる恐竜が描かれていた。もし今も恐竜がいたら共存できるのだろうか?
オックスォード大学の教授ロバート・マッシュ氏は、著書「恐竜の飼いかた教えます」で57種もの飼い方を紹介している。私製ジュラシック・パークはさぞかしエキサイティングだろうと思ったが、設備、環境、エサ、フンの始末に追われ、巨額の負債を背おうことになりそうだ。



■飛べない鳥、危ないトカゲ

初めて飼うひとには、始祖鳥(アルケオプテリクス)がお勧めだ。1億9960万~1億4550万年前のジュラ紀に活躍した彼らは、爬(は)虫類と違ってぬくもりや感情表現を持ち、あなたの心を癒してくれるだろう。羽根のなかほどにあるつめがチャームポイントで、前足の名残を残したその勇姿は、ご近所や友人にも自慢できる。

体重は700グラム程度、カササギぐらいの大きさなので広い家なら室内でも飼える。雑食でピーナツやキャットフードも食べるからエサには困らない。ただし、生きたヒヨコやハツカネズミも食べるので、ハムスターがいる家庭は要注意。リアルな食事シーンが、子供のトラウマにならないよう気をつけよう。
休みの日は広い公園で思い切り飛ばせてあげよう。21世紀の空を原始の鳥が飛び回るさまを、みんなに見せてあげよう。ただし羽ばたく力は弱く、自力で飛び立てないという説が強い。木をよじ登ってグライダーのように滑空し、地上の獲物を狩っていたらしい。残念。高い木の上から放してやるか、凧(たこ)あげの要領で上昇気流に乗せてあげると良いだろう。

ひと目をひきたい方は、迷うことなくティラノサウルスを選ぼう。T-Rexの愛称で知名度が高く、気性、人相、風体すべてが恐竜らしい彼は、近所の子供たちから絶大な人気を集めるに違いない。孵(ふ)化直後は全長1m、体重6kgほどだが、成長すると13m、7トン、体高5.5m程度になるから、サッカー場ぐらいの広さは用意したい。孤独を愛する単独性なので、多頭飼いは厳禁だ。

のこぎり状に並んだ15cmの歯、後ろ足に持つ20cmの鉤(かぎ)爪は、侵入者のやる気をそぎ防犯にも役立つ。ただし脱走したら近所迷惑がはなはだしいので、分厚いコンクリート壁と高圧の電気柵(さく)でしっかりと囲っておこう。慣れれば餌付けも可能だが、決して気を許してはいけない。暴君トカゲの名を持ち、ひとかけらの理性も持たない彼にとって、あなたは「エサをくれるエサ」にすぎないのだから。
世話するときは必ず麻酔銃やスタンガンを携行しよう。最悪の事態に備えてロケット・ランチャーが推奨されているが、至近距離では爆風で自分もやられてしまうので、ラハティL-39対戦車銃をお勧めする。

ティラノサウルスの魅力は、食肉竜類ならではのダイナミックな食事シーンだ。エサの肉は、体重4.5トンなら1日に55kg程度、7~8トンに成長すると100kgほど必要になる。100グラム100円の豚バラ肉なら10万円、1kg699円の鶏もも肉でも7万円程度となるので、食費は年間3,000万~4,000万円ぐらい用意しておけば大丈夫だ。激安カルビでも1食15万~16万円かかるから、ビーフは誕生日だけで我慢してもらおう。

■マヌケで気の良い巨大な相棒

大きな恐竜を飼いたい方はぜひブラキオサウルスにチャレンジしてもらいたい。全長23m、体重50トン、太い四足、高さ12mにも達する長い首と愛嬌(あいきょう)ある顔立ちが、あなたを満足させるに違いない。

草食動物らしく性格は温厚だから、攻撃されることはないだろう。ただし「困るほどマヌケ」と解説されているように、未発達な脳/神経が巨体とかみ合わず、事故が起きやすい。わる気はないにせよ、踏まれれば即死だから注意しよう。

彼らが活躍していた1億4500万~1億1200万年前の白亜前紀は、いまよりも気温が10~15℃ぐらい高かったと推測されている。冬の寒さがネックとなるので、定温が保てるドーム球場で飼うことにしよう。ただし、草食動物ながら困るくらい悪臭を放つと記されているから、屋根は開閉式が望ましく、日に2~3回の換気が必須だ。牛のような、メタンを含むげっぷも考えられる。げっぷで爆死では浮かばれないので、ドームは全館禁煙だ。

植物ならほとんどOKとのことなので、エサにはキャベツを与えてみよう。体重10トンあたり1日300kgほど食べるので、50トン級のおとななら毎日1.5トン用意しよう。激安通販を参考に10kg・1,200円で計算すると、食費だけで年間6,570万円!豊作の今年でさえこの金額だから、今後どうなるか考えただけでも胃が痛い。
維持費も凄まじい。広島市民球場がドーム球場だった場合の水光熱費は、年間4億円と見積もられているから、寒がりの彼らにあわせて暖房を使えば5億~6億円は覚悟すべきだろう。

■まとめ

恐竜は白亜紀末期にその歴史を閉じた。メキシコ・ユカタン半島に落ちた小惑星が、衝突の冬を引き起こしたのが原因と考えられている。地球の寒冷化は時間をかけてゆっくりと種を絶やした。恐竜たちにとって地獄の苦しみだったに違いない。
もし地獄よりむごいところがあるなら、それはいまの地球だ。なにせ、小惑星の手を借りずに毎日100種もの生物を滅ぼしているのだから。恐竜よりも危険な人類に乾杯。

(関口 寿/ガリレオワークス)

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