「何だと!さすがに温厚な私だって、鶏冠(とさか)に来た!」 なーんてセリフを耳にしたら、ずいぶんお怒りでらっしゃると思いますよね。まぁ、最近あまり聞かない表現ですが。このトサカ、もちろんヒトには付いていません。
「鶏冠に来る」、手元の辞書には「『頭に来る』の俗な言い方」とあり、おそらく怒りで赤くなった顔色をニワトリの赤いトサカに例えて生まれた表現と思われます。
頭の上でギザギザ尖(とが)っている様子も「頭に来た!」って感じですものね。なんとなくニワトリが怖そうに見えるのも赤いトサカのせいかもしれません。とはいえ、ニワトリとていつも怒り心頭なわけではなく、平穏に地面をつついているときでさえトサカは真っ赤。
ではあのトサカって何のためにあるのでしょう?
■「女の子にモテたいコケー!」って、見た目のアピールのため?
ひとつの説が、メスへのアピール。確かにオスのトサカはメスのそれと比べてご立派。ニワトリと同じキジの仲間であるライチョウのオスを見ると、繁殖期や興奮したときに目の上の肉冠が広がります。ニワトリのオスは特にそのような変化はなさそうですが、シンボルとしてのトサカを目立たせてメスの注目を集めているのかもしれません。
また、オス・メスや種類によって形状や大きさが異なるトサカで相手を見分けているという説もあります。同じ種類の異性を相手に選ぶための目印。
そんな「見た目重視説」に納得しつつも、そうなると気になってくるのが「肉垂れ」の存在です。ほら、くちばしの下でブラブラしているアレです。同じ肉質の部位ですが、アレも見た目のアピールに必要なんでしょうか?冠であるトサカと比べるとそんなにオスアピールの魅力を感じない(オンドリよ、ヒトのメス目線でごめんよ)。
そこで浮上したのが次の説です。
■トサカでクールに頭を冷やせ。体温調節のため?
トサカや肉垂れで体温を調節している説。これにはかなり納得です。アピールのためだけならほかの鳥類のように尾羽を広げたり、ダンスを踊ってもいいはずですから。トサカが肉質なのは放熱するため。頭部にだけ付いているところも、熱に弱いとされる脳を守るためと考えられますね。
でも、そこでもまたひとつ疑問が……。ではどうして、ほかの鳥類には体温調節のトサカが見られないのか?そこで、似たような生き物はいないものかと探しましたら、いました!残念ながらもう絶滅していますけれど。
■ご先祖はプテラノドン!? トサカは恐竜のなごりだった?
2007年に発表された研究結果で、映画「ジュラシックパーク」でおなじみのティラノサウルス・レックスから発見されたタンパク質のコラーゲンを分析したところ、ニワトリのコラーゲンと一致するものがあったそう。
やはり鳥類は恐竜の進化形。近縁なんですね。
そんな恐竜の中には肉質の突起のある種類もいます。なんと翼竜のプテラノドンにはトサカそのものが付いているじゃありませんか。このトサカの役割も放熱やかじ取りなどさまざまな説があり、最近ではオスとメスの違いを表すディスプレイのためという説が有力なのだとか。
そうです、どうやらプテラノドンもメスのトサカの方が小さいらしいのです。そんな風にニワトリを見ると、あの足も顔つきも恐竜っぽく見えてきませんか。ここからは想像ですが、鳥類の中でもニワトリは恐竜に近い種類で、トサカはそのなごりなのかもしれませんね。
ところで、家畜であるニワトリはお肉だけでなく、トサカも有効利用されているのをご存じですか? たまに焼き鳥屋さんで部位として出されることもありますが(コラーゲンたっぷりな食感がおいしいらしい。一度食べてみたい)、薬の材料としても利用されています。
ニワトリのトサカにヒアルロン酸がたくさん含まれていることがわかり、関節のための治療薬に使われているのだとか。ヒアルロン酸!大人の女性としては聞き捨てならない単語。今回トサカを調べてみて、ニワトリを見る目がいろいろ変わりそうです。
(新岡薫/エトブン社)
【関連リンク】
世界のヘンな動物「ヘー」な話
人間の想像を超えた新種生物の世界
ボルネオ島キナバル山で生物多様性調査
「鶏冠に来る」、手元の辞書には「『頭に来る』の俗な言い方」とあり、おそらく怒りで赤くなった顔色をニワトリの赤いトサカに例えて生まれた表現と思われます。
頭の上でギザギザ尖(とが)っている様子も「頭に来た!」って感じですものね。なんとなくニワトリが怖そうに見えるのも赤いトサカのせいかもしれません。とはいえ、ニワトリとていつも怒り心頭なわけではなく、平穏に地面をつついているときでさえトサカは真っ赤。
ではあのトサカって何のためにあるのでしょう?
■「女の子にモテたいコケー!」って、見た目のアピールのため?
ひとつの説が、メスへのアピール。確かにオスのトサカはメスのそれと比べてご立派。ニワトリと同じキジの仲間であるライチョウのオスを見ると、繁殖期や興奮したときに目の上の肉冠が広がります。ニワトリのオスは特にそのような変化はなさそうですが、シンボルとしてのトサカを目立たせてメスの注目を集めているのかもしれません。
また、オス・メスや種類によって形状や大きさが異なるトサカで相手を見分けているという説もあります。同じ種類の異性を相手に選ぶための目印。
そんな「見た目重視説」に納得しつつも、そうなると気になってくるのが「肉垂れ」の存在です。ほら、くちばしの下でブラブラしているアレです。同じ肉質の部位ですが、アレも見た目のアピールに必要なんでしょうか?冠であるトサカと比べるとそんなにオスアピールの魅力を感じない(オンドリよ、ヒトのメス目線でごめんよ)。
そこで浮上したのが次の説です。
■トサカでクールに頭を冷やせ。体温調節のため?
トサカや肉垂れで体温を調節している説。これにはかなり納得です。アピールのためだけならほかの鳥類のように尾羽を広げたり、ダンスを踊ってもいいはずですから。トサカが肉質なのは放熱するため。頭部にだけ付いているところも、熱に弱いとされる脳を守るためと考えられますね。
でも、そこでもまたひとつ疑問が……。ではどうして、ほかの鳥類には体温調節のトサカが見られないのか?そこで、似たような生き物はいないものかと探しましたら、いました!残念ながらもう絶滅していますけれど。
■ご先祖はプテラノドン!? トサカは恐竜のなごりだった?
2007年に発表された研究結果で、映画「ジュラシックパーク」でおなじみのティラノサウルス・レックスから発見されたタンパク質のコラーゲンを分析したところ、ニワトリのコラーゲンと一致するものがあったそう。
やはり鳥類は恐竜の進化形。近縁なんですね。
そんな恐竜の中には肉質の突起のある種類もいます。なんと翼竜のプテラノドンにはトサカそのものが付いているじゃありませんか。このトサカの役割も放熱やかじ取りなどさまざまな説があり、最近ではオスとメスの違いを表すディスプレイのためという説が有力なのだとか。
そうです、どうやらプテラノドンもメスのトサカの方が小さいらしいのです。そんな風にニワトリを見ると、あの足も顔つきも恐竜っぽく見えてきませんか。ここからは想像ですが、鳥類の中でもニワトリは恐竜に近い種類で、トサカはそのなごりなのかもしれませんね。
ところで、家畜であるニワトリはお肉だけでなく、トサカも有効利用されているのをご存じですか? たまに焼き鳥屋さんで部位として出されることもありますが(コラーゲンたっぷりな食感がおいしいらしい。一度食べてみたい)、薬の材料としても利用されています。
ニワトリのトサカにヒアルロン酸がたくさん含まれていることがわかり、関節のための治療薬に使われているのだとか。ヒアルロン酸!大人の女性としては聞き捨てならない単語。今回トサカを調べてみて、ニワトリを見る目がいろいろ変わりそうです。
(新岡薫/エトブン社)
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